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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)305号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中村慶七の上告理由書は別紙添付理由書記載のとおりである。

上告理由書第二点について。

農地の元所有者が、その買収計画に対する行政処分取消の訴訟を提起し、その行政処分の執行停止決定を得たとしても債権者が右買収計画手続によつて農地の所有権を取得したとし、その保全のために元所有者を相手方としてした仮処分決定はその理由を失つたものと解すべきではない。何故ならば右執行停止決定は単に農地買収計画に基く買収手続の進行を停止する効力を有するだけであつて、すでに執行されたその手続の効果を覆滅して元所有者の所有権を確定する効力を有するものと解すべきではなく、従つて仮処分債権者の被保全権利は右の執行停止決定により直ちに失われたものとすることはできないからである。然らば右執行停止決定がなされたことによつて、本件仮処分の理由が消滅したものと言い得ないとした原判決は結局正当であつて論旨は理由がない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八条)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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